02. 「ちょっと、待て」




 滾々と水が湧く泉に両の手を差し入れて、すくった水を口許に。流れるような所作。仰のく首筋の白さが目を射る。
 と、刹那の衝動に突き動かされて、その仰のいたままの白い喉元に軽く歯を立てて噛み付く。
「―――ッ、に!」
 驚き見開かれた瞳を視界の隅に、そのまま柔らかな草の上に沈み込むように押し倒す。立った時は気になる背の差も、こういう状況じゃ気にならない。
「……をい、」
 困惑と、僅かな怒気を含んだ声音が耳をくすぐる。
「痛てぇだろ」
 緑の絨毯然とした草の上に散る銀糸の髪が、綺麗だ。うっとりと目を細めて、一筋掬う。
「聞いてンのか」
 不機嫌そうなククールの表情にわずかに訝しむ色が見て取れる。
 くつりと心中で笑んで、そのまま恭しいまでの所作で零れる銀糸に口付ける―――と。
「―――ぉいって!」
 慌てて胸元を突き放された。戸惑う瞳に、にこりと笑みを見せる。その意を、ククールなら違えない。
 まさか、と白皙の面が僅か強張る。
「……ここでやる気か?」
 押し倒された体勢のヤバさに今頃気付いたように問うて来る。
「うん」
「ちょっと、待てって」
 それほど離れていない場所に、他の奴らがいるんだぞ! 必死に訴えるククール。
 焦ってる姿って、普段はあまり見られないから好き。
「時と場合を考えろ」
「ここまできて待てるほど、余裕ない」 ついでに言うと、思考力も限界だ。
「溜まり過ぎてるんだって」
 露骨に言うと、絶句して。次いで、真っ赤になる。
『俺は経験豊富だぞ』 って豪語してたくせに、変なトコで初だと思う。
「とっ、兎に角! ここは拙い」
「どうせ知られてるのに」
「そういう問題じゃないっ!」
 そりゃーね。こういう関係だって知られてても、実際にヤってる最中を見られるなんて僕だって嫌だけど。それに、ククールのアノ時の声とか乱れる姿とか、他人に聞かれるのも見られるのも嫌だ。
 だけど―――。
「僕の所為じゃないよ。ククールが煽ってるんだから」
「どんな理屈だよ!」
 憮然として睨みつけてくる。うん、言い掛かりだって解ってるけどね。



2005.08.28



 何度かヤっちゃった後だと思われる(爆)。つーか、主ククだとナチュラルに下ネタに走ってしまうのは何故だろう???




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