[ 01. はじめての ]




 遠慮も何もなく、触れてくるのはいつもと一緒。



「……気安く、触らないでくれる?」
 それが、第一声。
「えっ……?」
 それまで穏やかな光を湛えていた黒曜が、僕の言葉に驚いたように固まったのが解った。
 彼の表情は、酷く間抜けてたと思う。
 そして、次第にどこか困惑めいたものへと変わる。
「えっと……」
「もう何度も触らないでって言ってるんだから、いくら学習能力が低いっていってもそろそろ 覚えてもいい頃合じゃないか」
 よくそんなんで軍主なんて勤まってるよね…と言うと、向けられる表情に苦笑が混じった。
 こいつは、いつもいつも笑んでて、よく顔の筋肉が疲れないものだと感心している。
「今の僕の行動に対する感想って、それ?」
「は?」
 感想……って、何?
 訳が解らなくて、訝しさそのままに目の前の男を見上げた。
「あのね、ルック」
 囁きと共に自然近くなる距離に、思わず仰け反りそうになる。
 だけど、いつの間にやら捕られてた腕にそれを妨げられて。
 もう一度、さっきと同じ様に、触れられる……。
「あ…んた、ね!」
 今、触らないでって言ったばかりなのに―――! 本気で言葉が通じないのかと、睨み上げたところで視線が交わって。
 そうして、再び触れられる。
 今度は唇ではなくて、腕を掴んでいない方の指先で。


「唇に唇で触れるっていうのはね、キスっていうんだ」

 ―――"大好きな人"にするんだよ?



 遠慮も何もなく、触れてくるのはいつもと一緒…………なのに?



2004.02.04



 "はじめての"っていったら、やっぱりファーストキスでしょうv って事で(笑)。因みに、時間軸1で。
 ルックは、そういう点では絶対無知だろうなぁと思う。



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