[ 03. 指先 ]




 分厚い書物の頁を繰る、その細さ。
 時折、風に弄られ零れ落ちる髪を掻き揚げる、その色は白く。
 何かを考え込むと、無意識に唇に触れる……案外に長い指先に。

 どくりと―――鼓動が、振れる。



 神聖な図書館の一室で、唐突に。
「ルックの指って、いやらしいよね」
 笑顔のままにそう言えば、返されるのは当然の如くに呆れた眼差し。
「………何、それ」
 呆れられるのも仕方ないと思う。
 自分でも然りとそう思ったから。
 だけど―――。
「うん、何かね? ルックの指先見てるとドキドキして」
 ヤりたくなっちゃうんだよね……と、わざわざ小首を傾げて告げる。
「馬鹿……もしくは、変態」
「酷いな」
「これ以上もなく、あんたを的確に表してると思うけど」
 さくさくと言葉を投げてくる間合いが、酷く心地いい。
「うん、でもこれって、ルックの所為だよ?」
「何さ、それ」
 信じられないとでもいうように、綺麗な翡翠が瞠られる。
「ルックの指先が、綺麗だから?」
「…………訳解らないイチャもん付けないでよ」
 そもそも、と。
「あんたの方こそ、いつも指先ひとつで、人のこと翻弄してくれるじゃないか」
 言われてみればそうなんだけど。
 本人はきっと無意識なんだろう、見事なまでに朱に染まった耳朶に伸ばす手を捕らえて。
 驚いて咄嗟に退かれそうになる、その指先に。

 そっと、触れるだけのくちづけを落とした。



2004.02.10



 指先…ってメチャ萌えvでした(笑)! いや、浮かぶんだもん、別バージョン(そこはかとなくHっぽいの)とかも?
 浮かぶだけで、書けないのは周知の事実なのだけれどね。



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