[ 10. くちづけ ]




 触れては離れて、又再び……触れてくる。
 あまりに優しいその所作に、何故だか胸が痛くて哀しい。
 そうされる度に、閉じた瞼の奥が熱を持つ。

「……ルック?」

 訝しげに名を呼ばれて、顔を見上げて。
 歪んだ彼の姿に、ひとつ瞬く―――。

「泣かない、で?」

「……泣く?」

 どうして、僕が…と問い掛けて、眦に零れる雫に気付いた。

「……何で」

 触れると確かに濡れていて。
 僕は泣いていたらしいと、知る。

「ルック?」

 心配そうに覗き込んでくる彼の胸元を両の手で掴んで、ぐっと引き寄せた。
 鼻孔を擽るその香に、泪が止まらない。
 今の自分は、酷く無様だと…そう思う。
 だけど………。

「…んたの、所為だ」

 こんな意味のない行為で泣けてくるのは……それがあんただからだ。

「あぁ、うん。……ごめんね」

 それがあんただって事だけで、意味のない行為じゃなくなるから、だ。
 だから……全部。

「あんたが、悪い」

 そっと髪梳く指が、ただ温かい。
 ゆるりと、身を引かれて。
 未だに溢れてくる雫を、そっと唇で辿られて。
 耳朶に、米神から眦、鼻筋を啄ばむように緩やかに。
 そして、再び―――触れる。
 彼とくちづけを交わす度に、この身の奥深く刺さった棘が。
 深く、深く僕を抉るのだ。



2004.02.27



 こんなのとか[境界線]やらの書き方だと、メチャ書き易いんですがね〜(笑)。意味ない文章ってやつ。時間かかんないし。状況描写とかが苦手だから。←失格!



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