[ 12. 灯す ]




 奇跡とか、希望とか。
 そんな夢見ても詮無い絵空事に……明かりを灯すのは、誰?

 きっと、それを見せるのが彼じゃなきゃ、そんなモノは一蹴に伏してた。




 それは、まるで呪のように耳元から離れない言の葉。


『ルックの望みさえ知らない俺に、賭けてくれなんて傲慢な事言えない。
だけど、一緒にそれを叶えたい。手助けさせて欲しい』


 あまりに真摯な瞳に、いつかは否と言えなくなるだろう己を知っていたから、僕は逃げ出した。
 拒絶出来ない―――それは、彼に戦場に立てと言うのと同義だからだ。神に敵なす戦は、これまでにないほどの血を流すだろう。
 自分は彼を傷つけたくはないのだ、恐らく。
 彼の助力は、一部隊どころでない戦力となりうるのを知りつつも。
 戦場に立たせたくない。
 巻き込みたくない。

 彼の本来の望みは、そうではないのだから。



 世界の均衡を司るのは、気紛れな神で。
 気紛れに創られたに過ぎない人間は、その手の内でのた打ち回るしか術はなく。

 だけれど。

 そんな事、例え、造られた身であっても享受出来る筈なんてない。
 否、造られた身だからこそ、許せない。
 己の核こそが、神なのだ。
 神宿す身としてのみ、この身は存在するのだ。


 この身の存在がそれだけだの為だとしたら、何故僕はモノ思う?

 何故……彼に惹かれる?





 だけれどこの想いこそが、漠然とした希望という名の灯りを灯すのだ。



2004.04.08



 幻水3前提坊ルクを書こうとすると、こんな感じ(爆)。
 抽象的にも程があるけど……。



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