[ 13. 誘うモノ ]




 ゆらりと、風もないのに揺らぐ蝋燭の灯火。


 喘ぐ吐息と共に。
「蝋燭……消して」
 微かに震える声が、戦慄く唇から零れ落ちる。

 彼は、常でさえ酷く視線を嫌う。
 暴かれるのを、嫌う。
 意識を保てる間は、堪え様のない嬌声さえも唇を噛み締めて耐えようとさえするから。

 真に求めるなら、ある程度の妥協は必須。


 だけれど―――。
 帳のない窓から、限りなく円形に近付けた月の明かりが深く淡く室内に忍び込む状況では。

「でも、明るいよ?」

 蝋燭消しても無意味だと思うけど、との意を込めて告げれば、それでも消して…と返されて。
 彼の言葉のままに、脇の台に置かれていた蜀台の炎を吹き消した。

 途端に、ほうっと、僅かな安堵を含んだ吐息が零れる。

「慣れないね」

 くすりと、彼の耳元で笑み混じりに言うと、青白く月明かりに浮かび上がる肌に僅か朱色が乗る。

「…ッ、悪かったね」

「ううん、ルックらしくて…凄く嬉しい」

 変わらないことへの安心感。
 君が君のままであるという事の、安堵感。

 こうして、抱き合っていてさえ……高まる熱とは逆に、どこかでほっとする己が居る。

「唇、噛まないでね」

 言葉と共に、首筋に啄ばむように口付ければ、小さく息を噛み殺す。
 その様が、やはりルックらしくて。


「ねぇ、一緒に……溺れよう?」


 その身に沁み込めとまでの強欲さで、囁いた。






 底知れぬ熱と、穏やかな安らぎに誘ってくれるのは、唯一の君。



2004.04.13



 うーーーーーん? ルックは、いつまでも慣れないと思う(爆)。そもそも、自分さえ知らない自分を暴かれる感じが…嫌かなぁと?



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