眠りの守人 惨敗編 「……いつも思うんだけど」 そう前置きをして、ルックは目の前で血塗れた武器を一振りする男をしみじみと見やった。 「何だ?」 「あんた、強いよね」 「………はぁ〜?」 何を今更、といった態でアカザ・マクドールは腕を腰にあてて首を傾げた。 「何、ーったり前の事ほざいてんだ?」 当然だろ、と鼻で嘲笑う。 「…………………」 珍しく素直に思った事を言ったにも関わらずのアカザの態度に、ルックは深い翡翠の瞳を眇めた。 「……謙遜って、言葉知ってる?」 少しは覚えた方がいいんじゃない……と、辛辣に言い放つ。本当のことであっても、当然のように威張り散らされるとムカツクんだよね。 「俺の場合、謙遜する方が嫌味だろ」 お前に 『綺麗ですね』 って言って、 『こんな顔どこにでもゴロゴロしてるだろ』 ―――って返されるくらいには? ルックは、石板前で日毎繰り返されるそれを揶揄され、一層眉間の皺を深めた。 「そもそも、こんな綺麗な顔、そうざらに転がってる訳ねーじゃん」 「…………有難う、とでも返せって言うのか」 それこそ冗談ではない。こいつは知ってる筈だ。僕がこの自分の容姿に嫌悪さえ覚えているのを。 「お前は嫌ってるかもしれないけどな、世の中の殆どの奴等は綺麗なものは好きなんだ。別嬪さん拝めたら、5秒は寿命が延びる気がするくらいにはな〜」 …………その微妙な5秒って数値はどこから出てくる? そもそも。 「あんた、それ以上寿命延ばしてどうする気?」 「お前との夜の生活に謹んで勤しませていただきます」 「――――――大・却・下」 謹んで御辞退させてもらうよ。 ...... END |