坊 * ハヤテ / 2主 * マメぞう |
「ねぇ?なんでルックは笑わないの?」 一度だけ、そう本人に聞いた事がある。 「何で面白くも無いのに笑わないといけないわけ?」 その時は、そういつもの様に冷たく返された。 まぁ。ごもっともなんだけどね? 僕は、一度で良いから笑って欲しいんだ。 君に。 他の誰にでもなく、僕にだけ。 笑って欲しいんだ。 「え?部屋を貸して欲しい??」 僕の申し出に、マメぞうは予想通り怪訝な表情を浮かべて聞き返してきた。 「何で?ルックの部屋があるじゃないさー。」 「うん。そうなんだけど、昼間の間だけで良いから。ね?」 僕がそう言うと、彼は何事か考える姿勢を取る。 多分、マメぞうの事だから深くは追求してはこないと思うけど。 こういうことを頼めるのは彼くらいだと思う。 他に、この同盟軍で口の堅そうな信頼できる人間は。 あの吸血鬼の始祖とは、まだあまり話した事も無いし、部屋なんて貸してくれそうにないし。 「別に構わないけど?ハヤテが頼みごとなんて初めてだし。昼間はあんまり部屋にはいないから。」 「ありがとう。ごめんね?」 「どうせルックに何かするんでしょ?僕だったらルックに問い詰められても黙っていられるからね。違う?」 やっぱり、バレてた。 羨ましいな。そうやって、お見通しな所。――――ルックみたい。 僕は、ダメなんだ。 だからそういう君やルックに甘えてしまうんだね。 「うん。ルックにね。笑って欲しいから。」 「ふぅー……ん。相変わらず甘々なんだね?お二人は。」 羨ましい限りだね。と楽しそうに笑う彼。 ――――羨ましいのは、僕の方だよ。今、あれ程恨んだ『天魁星』という位置にいる君が。当然の様にルックといられる君が。 皮肉、だよね。 その場所が、今となっては心地よい場所だなんて。 「まったく。誉めちゃうよ。君の根性にはさぁ。」 ずっと僕の手元を眺めていたマメぞうはいい加減飽きてきたのか、大仰に溜息をついて体を伸ばす。 僕としてはずっと黙って眺めている君のほうがよっぽど凄いと思う。 「そう…かなぁ?」 二本の細い棒をなれない手つきで動かしていた手を止め、僕は小首を傾げてみせる。 それには彼はそうだよ、と大きく頷いて見せた。 あれから一週間になる。 毎日のように昼間はマメぞうの部屋でこうして慣れない編み物をしていた。 解放戦争時に少しだけアイリーンに教えてもらったのを必死に思い出し、何度か失敗しては作り直しの繰り返し。お陰でマメぞうの部屋は毛糸の屑だらけ。 悪いとは思ってるけど、本人が良いっていうし…。僕が居る昼間は誰も中に入れないでいてくれるから、掃除をする人もいない。 後でちゃんとお礼をしなくちゃね。 「あ、そろそろお昼だよ!ナナミが何か作ってくる前に食べにいこう!!」 「…僕は、まだ良いよ。先に行って来て?」 真剣に再び手元へと集中しだした僕は、そう視線を向けずに彼に言う。だけど、彼は強引なんだよね。 僕の手から毛糸と棒をふんだくり、いきなり僕の二の腕を掴んで立ち上がらせた。 「え?何?どうしたの?」 「何?じゃないよ!!!ご飯はちゃんと朝昼晩食べる!そうしないと体に良くないんだよ!?ただでさえ、最近ハヤテこもりっきりじゃないさ。ルックにはちゃんと食べろって言ってるんでしょ!?」 「う、うん……。」 相変わらずの勢いに押され、僕はやっとのことで返事を返す。 「ほらね。行くよ!」 言ってマメぞうの腕に強く引かれて部屋を後にする。 根性なんて…ないんだよ? 今でも、早く彼に会いたくてしょうがないのに。 離れる事なんて、できないんだ。 離れている間がとても辛くて。不安で。 何も手をつけられないくらい、考えてしまうんだ。 ルックを。 だから。今、彼の元を離れていられている自分が不思議でしょうがない。 ――――よく、耐えられているよね……。 「今さ。ルックの事考えてたでしょ?」 ぼーっとしてしまっていた事に気がついて、マメぞうの言った事がうまく聞き取れなかった。 「え?何?」 「もーー。相変わらずぼけぼけしてるんだからさー。今ルックの事考えてたでしょって言ったの!…って言ってもハヤテの頭の中は何時でもルックで一杯なんだよね?」 一人で納得したように大きく頷くマメぞう。 「うん。そうだよ?ルック以外の事なんて考えられないから。」 同じようにニッコリと微笑んで言い返すと、マメぞうはよく見せるあの醜悪な微笑を浮かべた。 「はいはい。おのろけですか。聞いてるこっちが恥ずかしいよ。」 「そんな事、無いよ?」 レストランの窓から外を見る。テラスの向こうの、青い空を。 「ルックは、誰の前でも、笑顔を見せてくれないんだ。僕の前でも、もちろん。どうしてだろうって思った。笑わないで、ずっと無表情でいるのは、辛いのに。楽しくないのに。」 気がつけば、マメぞうは食事をする手を止め、僕の話に耳を傾けている。それに内心微笑んでさらに言葉を続けた。 「……似てるって、思ったんだ。全てを失った頃の僕に。ただ、彼は自分を偽るような事はしなかっただけで。」 「自分が、リーダーだったから?」 マメぞうの表情の無い問いかけに、うんと頷く。 「ルックは…自分を偽らない。だけど、誰にも頼らない。」 だからいつも表情を見せないで、だけど。 凄く悲しそうな顔をするんだよね? 本当は寂しくて、助けて欲しいのに。 素直になれなくて。 知ってるんだよ?君が誰よりも優しい事。 いつも怒ってるんじゃなくて、本当は――――― 「だから、笑って欲しいんだ。自分を隠すような笑いじゃなくて、本当に嬉しい時に。僕には、これくらいしかできる事は思いつかないけど、教えてもらったから。」 右手を握る左手に力が入る。 「ルックに、あの時、泣いていいんだって。」 『泣いていいんだよ。あんたは。』 『リーダーだからって、泣いちゃいけないわけじゃない。…悲しい時に泣かない。嬉しい時に笑わない。それって、死んでる事と同じなんだよ。』 それは、自分に言っているの? 僕には自分に言い聞かせているようにしか、見えないよ。 だからね。 「笑って欲しいよ………ルックに。」 僕が、君を助けたい。 少しでも、軽くしてあげたいんだ。 君のその重みを………。 読み返していたときに思いつきました話です。 でも最後のほうちょっと自分ではよく分からなくなってきてたんですよ(爆死) 坊様サイドはどうしてもシリアスーになってしまうのですね。 しかも何故かマメぞうさんがいい感じにでしゃばってくれます。 完全にいい人だよ…U主…やさぐれてねぇ。 |
ある日、浅見さんよりカキコがございましたv 「キリリク小説の番外を書いたので奪いに来て下さい云々」という内容でございました♪ その次に取った月ノ郷の行動は言うまでもなく…速攻強奪でございましたvvv うきゅ〜!!! 坊、可愛い……。すっごく、可愛くないですか!! 2主もやたらいい人っぽくって〜。 本当に嬉しかったです〜〜! 浅見さん、有難うございましたvvv |