猫とコタツ
「マクドールさん、これを貰っていただけませんか?」 そう言って、ユノスは布団付きの机を持ち込んできた。 「・・・ええっと、ユノス、これは一体?」 「アダリーさんの発明品で、”コタツ”って言うんですけど、ちょっと問題があって・・・」 えへへと笑うのは可愛らしいんだけど、正直、問題があるようなものはもらいたくない。 「あ、問題って言っても、危険性とかは全くないんで、大丈夫ですから!」 引き取り手がいないんです〜!と泣きつかれて、最終的に受け取ってしまった。 「そんな訳でもらっちゃったんだけど、一体問題って何?」 ルックの部屋にコタツとやらを持ち込んで、訊ねた。 何で僕の部屋に持ち込むんだ、とルックはしばらく怒っていたけれど。 「気になるなら、一回、使ってみれば」 最終的に、ため息をつきながら、彼はそう言った。 スイッチを入れて、もそもそと布団の中にもぐりこんでみる。 「けっこう気持ちいいね」 暖炉とは違った不思議な暖かさ。 「お茶とか飲みだしたら、抜け出せなくなりそう」 「・・・それが、ユノスの言ってた問題だよ」 なるほど、それはそうなると納得してしまうけれど。 これを名残惜しく思っていたら、遠征になど出られない。 「それから、猫が増えた」 「あぁ、猫ってあったかいところ好きだからね」 それでも、訪れた猫を全て飼うわけにもいかない。食料だって必要になるし。 「ルックは、コタツ好き?」 彼は猫っぽいから、意外と好んでいるかもしれない、と密かに微笑む。 「・・・わからない」 もしかして、僕と一緒で初めて見たのか。 「じゃあ、一緒にあたたまってから考えてみてよ」 冷たい手を引いて、横に並んで座った。 「暖かくて、ホッとするよね」 布団にうずまって、机に顔を乗せて、ルックのほうを見る。 黙って座っているところをみると、結構気に入ってるのかもしれない。 やっぱり猫っぽいよな、と思った。それなら、僕は。 「ルックを猫に例えるなら、僕はコタツだね」 暖かくて癒してあげるでしょ?と、にこりと笑って見せると。 「馬鹿じゃない?」 やっぱりお決まりの台詞が返って来た。 「コタツのように、あたたかく包んであげるから、寄ってきてよ」 やわらかく微笑むと、ルックから困っている雰囲気が漂う。 「ま、別に例えなんて、何でもいいんだけどね」 あくまで軽く、言葉をつむぐ。困らせないように、でも、僕の気持ちは通じるように。 「とにかくルックが僕の傍に居たい、離れがたいって思ってくれば嬉しいんだ」 そう告げると、ルックが顔を背けた。 「・・・ルック?」 不審な行動が気になって、ひょいと彼の顔を覗き込むと、赤く染まっている。 「え、嘘」 その表情が、すでにそう思ってるよ馬鹿って語っているように見える、なんて。 僕の都合のいい勘違いだろうか。それとも、期待しちゃってもいいってこと? うわーそんな不意打ち、ありですか。つられて僕まで赤くなる。 二人して頬を赤く染めて。 中途半端に開いた距離が、妙に気恥ずかしい。 おずおずとコタツの外に出ている手をとって、冷えた指先絡めて。 ひやりとした手に、じわりじわりと熱がともる。 ほんのりと色づいた手を、ルックの頬にかけて。 目を伏せながら、ゆっくりと近づく。 交わる吐息が、かすかにあたたかかった。 ばたり、とルックの膝の上に倒れこむ。 「なんだか、僕の方がすっかり猫にされた気がするんだけど」 絶対に、僕の方がルックから離れられない。 にゃあと鳴いてみせると、額を思いっきり指ではじかれた。 |
4周年記念のお祝いにと、ひよさんから頂きました〜vvv 4周年企画への参加の際に、書いてくださるとの嬉しいお言葉頂いて、舞い上がりつつしたリクエスト内容は”まったりと温かな坊ルク”です! リクエスト通り、心の中まで温かくしてくれる様な坊ルクで! おまけに坊さまもルックも初々しくて可愛くて、こちらまで赤面してしまいますよね!! ひよさん、素敵なお祝い小説、本当にありがとうございましたー!!! |