息づく幸福






 そっと額に触れるだけのキスを落とすと、閉じられた瞼が小さく震えて……そうしてゆるりと開かれる。
 起き抜けの翡翠は、はっきりと焦点を結ばない。
 こんな無防備な彼の人を拝めるようになったのは、出会ってから何年目だったろうか。
 永過ぎる時間は、その感覚さえ曖昧にさせる。
 だけど。
「………おはよう、ルック」
 覚醒を促すように、ひそりと囁く。
「………ん、ソウ?」
 違え様もなく呼ばれた名に。
 僅かに擦れた声に。
 そうされるというのは、己にしか許されていないという事を……知っている。
「うん、おはよう。ルック」


 そして。
 そう言える、これ以上の幸福を、俺は知らない。









2004.00.00

 拍手お礼・ソウ坊 100年後くらい?

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