no title 正直、誰かのものになんてなりたいと思った事なんて、ない。 だけれど。 「ルックは僕のものだよね」 「はぁ?」 いっそ、楽しそうに言ってのける相手に、ルックは思い切り呆れ果てた。 「僕は、君がそんな風に断言できるような事、した覚えも言った覚えもないんだけど。君は一体どんな根拠があって、そう言うの」 本気で見当がつきかねるんだけど。それなのに、返された笑みは酷く無邪気。 「そんなのないけど?」 「……だったら」 「ないけど、僕がそう決めたからv」 「君、馬鹿?」 きつい眼差しで辛辣に言い放ってやったのに、気分を害した風もなく頷く。 「うん。ルックの事に関しては、そうかもね」 むしろ、嬉しそうにのたまう。 「訳解んない事言ってるよね、相変わらず」 「いいんだよ、恋は盲目って言うし」 「……恋すると人は馬鹿になるって意味じゃないんだよ、それって」 呆れ返って情け容赦ない嫌味しか出て来ない。 「結局は、自己陶酔でしかない幻想に人を巻き込むの止めてくれない?」 「巻き込んでるのはルックだよ」 相手が君じゃなきゃ、こんな自分自身を抑えられなくなるような感情に支配される事なんてなかったよ―――躊躇いも何もなく、そう言われて。 「……じゃあ、勝手に巻き込まれないでよ」 そんなの…と、一層笑みを深くして、軍主は至極満足そうな笑みのままに。 「無理、だよ」 そう、憎らしいほどにきっぱりと宣言した。
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