贈り物 そっと差し出された手には、摘み取った野の花々。 「残らないものなら、受け取ってくれるよね」 そう言って、微笑む様を前に。 思いっきり深く、溜息を零してやった。 "そんなモノ、要らないよ" そう冷たく拒絶したのは、つい先日。 その時こいつの掌にあったのは、小さな翡翠のピアスだった。 天間星として軍に携わって知ったのは、人間というモノは何かを贈る代わりに何かしらの見返りを求めるのだということ。贈り物はその為の代価なのだと。 そんな事で手に入れられるモノなんて、所詮はそれに見合った紛い物でしかないだろうに。 僕が拒絶したのは受け渡されそうになった代物にではなく、そんなモノを寄越してこようという気持ちに他ならない。 だから、要らないと言ってやったんだ。 それなのに、恐らくそれと知りながらもこいつは今度は手にした花を手向けてくる。 渋面を向けてやってるのにも関わらず、だ。 「……言葉遊びしてるんじゃないよ」 そもそも、と。 「何でこんなモノ寄越すのさ」 そう、実はそれが一番の疑問だった。 前の時に訊ねなかったのは、実際どうでも良かったのと返される応えに寄って降りかかるかも知れないあれこれが面倒臭かったから。 そうまでして、あんたは何が欲しいの―――と。 いっそ、つっけんどんに訊ねれば。 「えっ? ルックが好きだからだよ」 返されたそれに、これ以上もなく呆れてやる。 「モノを介してでないと気持ちも伝えられない訳?」 辛辣に言い放つと一瞬呆けた顔が、次の瞬間には艶やかなまでの笑みに変わった。 「それは違うよ、ルック。ピアスにしてもこの花にしても? ルックに似合いそうだから渡したいって思ったんだよ?」 だから想い云々に関わらず、受け取ってくれたら嬉しいんだけど―――と、再度差し出された花を咄嗟に受け取ってしまい。 花の向こう側で至極嬉しそうに微笑む顔に、何故だか、とても不思議な心持ちに陥った。
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