あの頃は、ただ近くに居れるだけでいいと思っていた。

 それは、手を伸ばせば、触れ合える微妙な距離で。
 体温さえ感じられるかも知れないという、錯覚さえ覚えて。


 ―――だけれど。

 次第に君と僕を隔てる距離が、もどかしくなって。
 抱き合えば、距離を埋められるのかと……そう思って。

 半ば強引にこの腕に絡め獲ったのに。


 いっそ、遠くなったと感じるのは―――何故?









2005.01.12

 『単30題』で書いてた”遠”の没です。……短過ぎて、没。

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