情熱






 好きになれば、他の人には見せたくない。
 誰にも触れて欲しくない。
 自分だけを、見て、そうして想ってて欲しい。

 そう告げると、きっと彼は面倒くさそうな表情を隠しもしないで、
「……わがまま」
 呆れたように返してくれるんだろう、けど。

 彼は知らなさ過ぎる。
 だけれど、だからといって、知って欲しい訳じゃない。
 時には身を焼き尽くさんばかりの独占欲を、どれ程の精神力で抑え込んでいるかなんて、彼だけには絶対に知られたくない。
 それは、醜く貪欲な想いだ。
 自分自身でさえ、一旦開放すれば抑えきれるかどうか解らない。
 狂気と背中合わせの自分勝手な―――情熱。









2005.10.13

 2005年10月の拍手アンケートお礼SS

BACK