コトの始め 1 そもそも、親父が北方なんかの任務に赴くことになったのがコトの始め。 その代わりに、俺が16歳という若さで自国である帝国に仕えるはめになっちまった。 16歳―――この歳で、この若さで軍人かよ! と思ったが、将軍のひとりである親父の威光を楯にとれるのを考えたら、案外いい家業かもしれない……と思った。 何か度量の少なそうな男を上官だとか紹介されて、正直げっそりした。 これが! この俺の上官!? 如何にも脇役然とした、この小男が? この俺様にあれやこれやと命令を下すっていうのかよ! 初っ端からなんの冗談? とか思ったね。 俺様をこの程度の男に就けるなんて、この国の先行も知れてるな……と呆れた。 その上、仕事始めが 『星見の結果』 を取りに行く―――だって? んーなガキでもこなせそうな仕事、この俺様にやらせんなよ。 ま、珍しい竜とかいう獣に乗れるっていうから、やってやってもいいけど。 魔術師の島―――っていうのは、無人島のど真ん中に高い塔がぽつんとひとつあるって感じのちっぽけな島だった。 海岸近くで竜から降ろされ、ここから歩きだって言われて、面倒臭くて大きな溜め息が零れた。 「…………面倒、俺ここで待ってていいだろ」 そう言うと、グレミオが慌てて 「坊ちゃん!」 と、いつもの如く声を荒げた。 「かったるい……」 「仕官しても相変わらずだな、シランは〜」 俺の唯一の友人であるテッドが、からから笑いながら言うのにちろりと視線を向けた。 唯一の友人っていうか、何するにしても、同年代の奴らの中じゃこいつくらいしか俺に付いてこれる奴がいないから、友人って立場に置いてやってる。 それに、俺に言いたいことずばずば言ってくるのも、こいつくらいだし。 変に気を使わなくて済む分、付き合いやすい。まあ、相手が誰だって、気ィーなんて使う気もないけど。 気ィ使うとしたら、女? それも、やらせてもらうまで…って限定付きでだな。 「坊ちゃんが行かれないと、私達だけでは 『星見の結果』 は渡してもらえないかも知れません。帝国直の代理人は坊ちゃんだけなのですから」 クレオが静かに正論を述べる。 俺、こいつ苦手。口数少ないくせに、こいつが言うことは一々正しくてつけ込む隙がない。 「はいはいはい」 おざなりに返事をして、獣道のようなそれに足を向けた。 だーーーーー!! マジ、かったりぃ。 ...... 多分、つづく
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