幻水1_1 留まる事を知らない筈の風―――。 なのに、何故? 風に構築されたこの身は、留まり続けるのか。 「…っんで、こんな事すんだよ!」 そう言って、自分に食って掛かるのは、自分より更に頭半分ほど小さな少年。 ……子供じゃないか。 初対面のその少年を見て思ったのが、まずそれ―――。 自分だって、実際はまだまだ子供なのだけれど…それでも、その自分よりは確実に小さい姿を見て驚いた。 この島にやって来るのは、定期的に訪れる帝国の使者ばかりで、その任に就いているのは、大抵見上げなければならないくらいに体格のいい大人ばかりだったから。 「大体あんなの、行き成り差し向けてくるかっ?!」 少年は今し方、己が一行が屠ったばかりのクレイドールを指差しながら、わーわー喚いて顔を真っ赤にして睨み付けてくる。 「………あんた、何?」 思わずそんな台詞が、つい口から零れてしまう。 「帝国の使者だよ! 星見の結果、受け取りに来たんだ」 使者……? 「だってあんた、……子供じゃないか」 こんな子供を使いに寄越すほど、帝国は人材に不足してるのか? 「〜〜〜悪かったな、子供でっ!」 一層怒りを煽ったみたいだけど…。否、それは別に構わないけど…子供を苛める趣味はないんだよね。子供なんてすぐ泣くし、煩いし…面倒なだけだ。 「レックナート様なら、この塔を昇っていけば会えるよ。さっさと行けば?」 うんざりしてそう言い、さっさと踵を返す。 「あっ、おい! ま…、」 恐らく引き止める為だろう、こっちに向かって手を出してきた子供なんか無視して、風を呼ぶ。 「子供は嫌いなんだよ、疲れるからね」 刹那朱を乗せキッとこっちを睨み付けてくる少年にそう言い置いて、その場から転移した。 ...... to be continue |