幻水2_1






 それは祈りだったのかもしれない。
 はた又、強すぎる―――呪。

 だけれど、願ったのは確か。
 それは…その身全てを賭けるほどの、『想い』だった。




 目の前には、この3年間ずっと逢いたいと、そう願っていた彼が居て。
「っ…会えた―――!」
 無意識に、我知らず叫んでいた。
 無我夢中で駆け寄って、変わらない筈のその身を抱き締める。
 変わらない―――筈なのに。
 抱き締めたその身体は、当時より……小さくなってた。
「………っ、な!」
 勢いのまま抱き着かれて、声さえ出ないらしい彼―――ルックの驚く様が、抱き締められたままで動けないらしいそれで解る。
「逢いたかったっ!」
「……どう、して」
 いつまでも唖然とした様子が、あまりにもらしくなくて…。
 抱き締めた腕の力を緩めて、視線を微かに下げ…彼の瞳を覗き込む。
 だけど―――。
「どうして……?」
 見上げてくる瞳は3年前から変わらない、綺麗な翡翠の色。
 その瞳に、ほっとする。
 そうして、恐らくルックが一番聞きたいんだろうそれを告げる。
「願ったからっ! 俺、ルックに追いつきたくて! ずっとずっと願ってた、大きくなりたいって。そして、ルックに会いたいって」

 そして……別れる間際ルックが言ったように、強過ぎる願いはこの身に呪をかけた。








 3年の時を経て、国家間で巻き上がった新たなる戦の焔。
 国境を挟んだ小さな諍いではない紛争。
 又、多くの尊い血が流されるのか……。

 近づきたくない―――。
 関わりあいたくない―――。
 人が命を落とす度、戦争が大きくなる度、それは自分の所為なのかも知れない…と思うから。
 だけど…。
 この戦争が、真なる紋章が関わってるものだと知った時。
 彼が居るかも知れない……そう思っただけで、戦火が飛んできそうなこの地を離れる事が出来なくなった。

 翡翠の強い意志を秘めた瞳。
 毒舌だと称されるそれを、誰彼構わずふるっては、反感を買いまくって。
 だけど、その言葉にはちゃんとそれなりの意味もあって、考えなしに鞭撻を振り回していたんじゃないって事を知ってる。
 不器用だったって事を知ってる。
 この3年間、ずっと彼の事を想っていた。ずっと、ずっと……自分でもどうにかなってしまったんじゃないかと思うくらい。
『―――想いが力になる』
 別れ際に告げられた言葉が、ただそれだけが自分を前へと進ませた。
 そうして、彼を想い、ただ一心に願った。

 逢いたい―――。
 そして、認めて欲しい。

 名前を……呼んで欲しい。








...... to be continue


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