幻水2_2






「子供、成長……してる?」
 聞くまでもないと思う。
 3年前はルックの方が頭半個分くらいは大きかった。だけど、今、それは綺麗に逆転してる。見上げてた俺がルックを見下ろして、見下ろしてたルックが俺を見上げてるんだから。
「……どうして、」
「…ルック?」
 何で、 ”どうして” なんて言葉がルックの口から出てくるんだ?
 それより何より。何でそんな途方に暮れたような表情してる?
「だって…子供は―――」
 僕を好きだなんて、そんなの思い込みだった筈だ、と。
「思い込みじゃないって、そう言っただろ!」
 だから、この俺の成長がある。
 それは、紋章の呪いを弾き飛ばすほどの 『想い』 だ。俺が、ルックを想っていた証だ。
 それとも―――。
 そう思いたかったの…か?
 3年前は、何があっても―――例えば俺の近しい者が死という結末を迎えた時でも、想いを告げた時でも、別れの時でも、この強く深い翡翠の瞳がそらされる事なんて一切なかったのに。
「………ルック?」
 それだけで―――堪らなく、不安になる。

「……呼んでるよ」
 不意にそう言われ、この城へと俺を誘った軍主の存在にはっと気付く。
 どことなく所在なげに、石造りの階段の一番下でこちらを見ている―――俺と同じ年の、子供。
「あっ…」
 その軍主の呟きに、はっと視線を石板前に返すと、風を纏ったルックが今消え去ろうとしているところだった。
「――ック、」
 伸ばした手が、虚しく空を掴む。

「……ルック」
 掴み損ねた掌を、思わずぎゅっと握り込む。
 どうして、消えたんだろう。
 俺の、前から………?








...... to be continue


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