再逢 彩哀 …最愛 − 3 翌朝、シーナはオギの強襲で爽やかと云いかねる朝を迎えた。 「シーナ、ルックどこ泊まってるか知んねぇ?」 「…………どうして、俺ンとこ聞きに来るんだぁ」 昨日までの遠征は、シーナといえど身に堪えない訳がない。じっくり睡眠を取って…とは思ったものの、酒場で行き合わせたレストランの給仕の女の子と、午前様と云われる時間帯まで飲んでいたのだ。 寝付いたのがそんな時間帯では、いくら若いとはいえ疲れが取れる筈が、ない。 「ルック、部屋に居なかったんだよなぁ。そもそも、昨日風呂狙いで俺ンとこ来ると思ってたのに来なかったし」 シーナは我が侭一杯のオギの台詞に動じた風もなく、漸く寝台の中から這い出た。わしわしと頭を掻きながら、 「他の男ンとこじゃねーのか」 と言う。 「あの疲れきった状態のルックが、あれから男の相手できる訳ねーじゃんか」 そもそも、ルックが大勢で風呂に入るのを嫌っているのを知り得ている上で、風呂が混む時間帯に雑事が終わるように仕向けたのだ―――と、威張ってうそぶく。 「…………計ってんなよ」 本気でルックを哀れに思いながら、シーナは寝巻きを脱ぎ適当に放ってあった衣服を纏った。 「あっ、探してくれんのか?」 「………そのつもりで叩き起こしたんだろーが」 既に怒る気力も湧かず、 「ちくしょー、だからガキって嫌いなんだよ」 と心中で唸るシーナは自分とオギの年齢がそういう程に変わらないのには、気付かないふりをした。 部屋を連れ添って出、シーナがオギを誘った先は、 「……貴賓室?」 だった。 「そ、多分な」 「あり得ねーってくらい、あのふたりメチャ仲悪いぞ?」 「そう見えて実は、」 「……いいのか?」 「いーや、最悪」 埒もないやり取りを交わしながら、シーナが扉を叩こうとした瞬間。その重厚な扉が、実にタイミングよく開かれた。 「……っおう」 「はよ、ルック来てねー?」 開口一番問うシーナに、アカザは目を丸くした。 「よく解ったな」 感心しながら、部屋の奥に向かって 「シーナとオギ来てるぞ」 と声を掛ける。 それには苦笑で返したシーナは、オギを指差した。 「俺じゃなくて、ルック探してたのはオギ」 「……………朝っぱらから、煩いよ」 きちんといつもの法衣を纏ったルックが、部屋の奥から鬱陶しそうな様を隠しもせずに現れたのを目にし、オギは不機嫌そうに彼を睨んだ。 「……どーして、アカザんとこには泊まる訳?」 ルックは、他の男の部屋には、コトが終わりどんなに疲れきっていたとしても、泊まってはいかない。 それは、オギの部屋で一晩過ごす時でも同様だ。 うとうとしてる間とか、はっと気が付いた時にはルックの姿は綺麗さっぱり消えている。 なのに、どうして…とオギが思うのは、当然だろう。だが、ルックはそう訊ねられて、溜息を零した。 「………この城で、オギの次に寝心地がいい寝台だし、ここなら風呂もあるから」 「だったら―――」 オギが言いかけた台詞を遮るように 「それに、こいつだったら、寝込み襲われる事なんてまかり間違ってもないし、ね」 ルックが続けると、刹那言葉に詰まったオギの様に前科ありなのか…と、シーナは目一杯肩を落とした。 ただひとりの例外が、 「何でだー? 結構イイって言ってたけど?」 いかにも経験豊富を思わせる台詞を吐く。 「………あんたが今まで相手してきた女と一緒にしないでくれる? ヤりたいならちゃんと誘う。睡眠取りたいから寝てるんだ。それに、意識のない時に、好き勝手されるなんて冗談じゃないよ」 取り敢えず、添い寝していい相手は選んでいるらしい。 「要するに、ルックにとってアカザってーのは、安全パイな訳だ」 解るか、オギ? ―――と問うて来るシーナに、オギは渋々といった態で頷いた。 ...... to be continue
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