− 序章 −




 その一線を遮るものとてない、遥かなる地平線。

 広陵とした大地を、渇いた風が駆け抜ける。


「真に望んで手に入らないものなんてないって、そう思ってた」


 視線は遠い地平線に馳せたまま、風に弄られるバンダナの端を抑えて呟く少年を横目に。
 艶やかなまでのその美貌に嘲笑を浮かべた年端もいかない少年が 「傲慢だね」 と、微かに鼻を鳴らした。


「僕は、欲して手に入ったものなんてないよ」


 尤も―――と、微かに口端を上げる。


「何かを欲しいなんて、思ったこともないけど」


 そう言う翡翠が、暗く光を弾いた。






…… to be continue



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