幻水1_11






 シャラザート陥落と共に、明かされた裏切り。
 そして、傷を負った宿星。
 一体……子供は暇なく降り掛かる痛みに、どこまで堪え切れるのだろうか……。

 その身に傷を負った軍師は、士気を上げる為にその身体を横たえることもなく、大義名分をこれ見よがしに振り翳す。
 広間に集った面々は、否応なくそれに呼応する。
 流石、名軍師といった所か。
 策を、目的をなす為なら、その身さえ削るのを厭いもしない。
 だけど………そこまで出来るのは何故だろう。
 ただ純粋に、国の為とでも言うのか。
 それとも、自分の信念を賭けるに値すると信じた星の為だろうか。
 その星は、軍師の横で冴え冴えとした表情を浮かべ、真っ直ぐに会した面々を見回す。
 僕の前に居る時とは違う、軍主らしい顔付きをしている。
 二面性有り過ぎなんじゃないか……。
 そう思ってしまうくらいには、きっぱりと引かれた一線を感じた。
 軽く溜息を吐いた瞬間、子供と視線が逢う。
「………」
 どこか物言いた気に微かに笑みが浮かび……眇められたけれど、直ぐにそれは反らされた。
 軍主としては、満点だね―――。
 そうある事を望んではいないだろうに、それでもその任をこなし切る。
 そんな子供を、いっそ……哀れだと思う。
 器用なのか不器用なのか、そんな事はどうでもいいけど……馬鹿だよね。
 士気を高めるだけ高めた星々が上げる咆哮の音に隠すように、再び溜息を落とす―――刹那。
 懐かしい師の気配が、その場に割り入って来た。
「………ックナート様」




 108星の祝福が―――閉ざされた門を開く。


 それは、………本当に祝福なのだろうか。








...... to be continue


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