幻水1_13 「君は寂しかったから、そう思い込もうとしただけに過ぎない」 途端にキッっと睨み付けてくる子供。 怒りに燃える黒い瞳が、最初に逢った時と変わらず綺麗で……どんな苦行も子供の本質そのものを変える事なんてなかったんだ、と思う。 「ちがっ!!!」 「違わない―――。」 これは暗示だ。 「子供は僕なんて必要じゃない。子供の必要とする従者は、ちゃんと君の傍に居る」 「―――ック!」 「子供は思い込もうとしていただけだよ、僕が必要なんだと。そう思ってれば、乗り越えていけるから」 「ち、違う、違うっ! グレミオとルックは違う! グレミオは家族だけど、ルックは―――ッ」 「星のひとつだよ」 びくりと強張る身体。 小さくて、細いままに……成長をする術を失ったそれ。 「この戦争が終われば、僕は僕の居場所に戻る。子供には子供の居場所がある筈だよ。君の父親が言ってたようにね。そして、僕と子供のそれは―――違う」 戦争が終われば―――星も又、その役割を終えて離れてゆく。 自分と子供の星が交差する事はあったとしても、交わり絡む事など……恐らくもうない。 関わり続ける事に、意義なんてない。 何故なら、恐らくずっと星として在り続ける僕とは違い…子供は星ではなくなるからだ。 そうなれば、僕と子供との間に繋がりなんて―――ない。 「………俺っ、」 子供の握り込んだ拳が、小さく震えている。 手だけは…打撃系の武器を操る所為か大きいよね。 「俺は、……そんな事も解らない程子供じゃない!」 …………子供、じゃないか。 僕の言霊の暗示に掛かっていれば、僕を想っているというその感情が思い込みの産物だとしても、離れていく痛みを感じなくて済むのに。 その方が、楽なのに。 それを良しとしない、妥協をしないのは、子供である証拠じゃないか。 ねぇ、どうして………自ら苦しい道を選ぼうとするの? ...... to be continue |