幻水1_3






 正直、驚いた…というのが第一印象。
 子供だと思ってたのに、結構軍主らしくやってる。
 レックナート様に連れられてやってきた解放軍とやらの本拠地で再会した子供は、子供ながらもちゃんとその任を自分なりにこなしているようだった。
 子供で居る事を許されなかったその幼かった顔付きは、黙って立っていると酷く大人びてさえ見える。
 ………だけど。
「あっ! お前!」
 人の顔を見て、指を突きつけてきた子供の顔は……。
「何? 子供……」
 以前見知ったままの子供の顔だった。
 いいとこのボンボンのくせに、人を指差すなんて事やっていいのか。
「〜〜〜子供じゃないっ! ソウ! 俺はソウ・マクドール! 子供って言うな!」
 初対面でクレイドールを仕掛けた事を根に持ってるのか、勢い良く食って掛かってくる。
「あっ、そう。どうでもいいよ…」
 名前なんて知ってる。レックナート様が託された石板の天魁星には、ちゃんと"ソウ"って名が記されてあったからね。
 そして、天間星には僕の名前―――。
 それだって、実際どうだっていい。
「…どうでもいいって何だよ!」
「………誰が軍主でもいいんだよ、別に。僕は僕の仕事をこなすだけだから。別に、軍主が君じゃなくても構わないって事だよ」
 そう言ってやると、驚いたような子供の顔に出会った。
 そして、徐々にその驚きが和らいでいく。
「…そ、うか」
 ほっとしたようなその表情に、訝しく思ったけど……所詮子供のする事なんて解らないんだから。
 ……どうでも、いい。
「それより、石板どこに置くのさ。さっさと運んでよね、子供」
 辛辣にそう言ってやると、 「げっ!」 と顔を顰めてこっちを睨み付けてくる。
「これ、重いだろ」
「さぁね、知らないよ」
 別に僕より小さな子供に運べなんて言わないよ。ちゃんとそれ用に、熊みたいにでかいのとか居るじゃないか。
 ぞんざいな僕の言い様に怒るでもなく、それどころか嬉しそうににっかりと笑う。
「……………何、」
 何で、そこで笑ってるのさ。
「何でもない、」
 そう言って石板を移動させるのに、他に指示を出そうとして移動された顔付きが―――。
 一瞬にして、大人びたそれに取って代わる。
 それは、否応なく変わる事を余儀なくされた子供の顔だった。
 この小さな身体に背負ったものは重くないだろうか……。

「………どうでもいいけど、ね」








...... to be continue


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