幻水2_5






 戦地に赴くのに恐れを抱かなかった訳ではない。3年前と変わらずに、呪われた紋章はこの手に、この身にある。
 だけど……それでも、逢いたかったから。
 この地でしか逢う事が叶わないというのなら、その恐れでさえ克服出来る程に……ただ、逢いたかった。





「僕は…………」
 ―――君が怖いよ。
 どうして、そんなに想えるの?
 どうして、そうやって曝け出せるの?
 どうして―――――。


「………どうして僕なのさ」
「ルックは俺に何も求めないから…」
 天魁星が誰でもいい、―――俺じゃなくても構わない。
 そう言って、星の戒めから救ってくれた。
 だからこそ、逆に最後まであそこに立って居られた。
「…………だけど…、」
 ―――何も返せないよ。囁くように呟かれた言葉。
「信じてない訳じゃない。君が…僕を想ってくれてるのを、疑ってなんかいない……。だけど―――」
 どうして、こんな辛そうな顔してるんだろう。
 貰らう言葉より、そっちの方が気になって仕方ない。
 3年前のルックは、いつも燐としていた。何度も立ち止まりかけた俺を叱咤して、どうしていいか解らない時も泣いていいんだと教えてくれて。
 星を担うから、だから仕方なくだ……とか、師匠の言いつけだからとか辛辣な物言いながらも。それでも、最後まで傍に居てくれた。
 こんな、どこか途方に暮れたようなルックを見たことなんて、ない。
「…………名前は呼んであげる。だから―――」


 それ以上、何も求めないで。





 願うばかりだったのだ。
 ただ、無我夢中に欲するばかりで―――。
 求められる辛さを知っていた筈なのに。
 自己に塗れた、追い詰めるものにしか成り得ない想いだったんだ。








...... to be continue


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