幻水2_7






 夕飯だとグレミオに呼ばれて、のろのろと食卓につく。
 正直、食欲はあまりなかったけど、そう言うとグレミオは8割方大騒ぎして人のこと寝台に押し込むから。
 いつまで経っても、過保護なのは変わらない。
 グレミオ特製のシチューをもぐもぐと口に運んでいると、それを傍で見ていたグレミオが満面の笑顔を向けてくる。
「………何?」
 普段はそんな風にあからさまに見つめられることなんて、皆無に等しいから……何となく、居心地が悪い。
「いえ、坊ちゃんが不機嫌な顔してるのが嬉しいんです」
「…………………は?」
 それって……どういう意味だ???
「だって坊ちゃん、私の前だと笑顔作ってばかりだったでしょ」
「………ど、して」
「解らないと思ってたんですか? 伊達に12年間も坊ちゃんの傍に居たつもりはないんですが」
 そりゃ、そうだろうけど。
「………だけど、」 気付かれてるとは思わなかった。
「無理に作った笑顔見せられても、安心できません。だけど、今の坊ちゃんはザツ君達に会ってやっと素の顔見せてくれてますから、それが単純に嬉しいんです」
「…………ごめん」
 グレミオが過保護なのは、俺の所為だったのか。やっぱり、まだまだ子供なのかも知れない。
「いいんですよ」
 にっこりと笑うその笑顔に、正直ほっとした。
 グレミオが心の底から笑んでくれてるのが解るから、ほっと出来る。
 そうか……そういう事なんだ。
「で、何をそんなに悩んでるんですか?」
 シチューをもう一口運び込んだところでそう問われ、液体の筈のそれに咽た。
「……な、に?」
「悩み事がある時の坊ちゃんは、昔から同じ顔して悶々としてるんですよ?」
 ―――ご存知ないですか?
 って聞かれても、自分のそんな時の顔なんて自分じゃ解らないに決まってる。
「グレミオは……」
 俺の事に関しちゃ敏いよな〜。他の事に関しちゃ、全っ然なのに。
「隠すだけ無駄ですよ?」
 そんな台詞が、今はただ有り難かった。








...... to be continue


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