幻水2_9






 一緒に行ってもらえますか?

 そうザツが頼んできたのは、グレッグミンスターに戻ってから5日後。
 どこに―――? そう尋ねると、 「ティントです」 と答えが返ってきた。
「ティント……?」
 実際に訪れた事はないが、地図で見たことならある。確か、山に囲まれた鉱山の町ではなかっただろうか。
「ネクロードが現れたらしいんです」
「ネクロード?!」
「解放戦争の時にも現れたって聞きました。一緒に戦ってもらえませんか?」
「解った、」
 国家間の直接の戦闘には手を出さない。だけど、個人的には―――ザツの友人としてだったら手を貸すと約束した。
 ザツがどんな未来を掴み取るのかって事にも興味はあったけど、それ以上にルックの傍に居る事が目的だった。
「気を付けて下さいね。それと、―――頑張って下さい」
 ほよほよと笑いながら荷を手渡してくるグレミオと、恐らくルックとの事について言ってるだろうその意味深な台詞に、苦笑が漏れた。



 同盟軍の本拠地に向かう道すがら、詳細を聞いた。
 同行して来てたルックの隣りで歩を進めながら、彼の様子を伺う。
 前に城を後にした時のような一歩離れたような態度が薄れてて、ちょっとほっとした。
「ネクロードって、3年前の亡霊だな」
 あの時、倒したと思ってたのに。
「子供はツメが甘いんだよ」
「…………言うか?」
 ルックの容赦ない台詞に、むっとする。だけど、漸く”らしい”ルックを間近で見れて、ほっとした。
 しかし……自分だってアレと対峙しておいてそこまで言うか? いや、”らしい”のは嬉しいんだけど…。
「ネクロード退治、ルックも行くのか?」
 恐らく同行するのだろうと思って尋ねると、 「……仕方ないからね」 とウンザリしたような返事。
「嫌そうだな」
「好色の吸血鬼なんて、熊と星辰剣に任せてたらいいんじゃないかと思ってるだけだよ」
「………そりゃ、まぁ」
 3年前にも感じたが、ビクトールにはあの吸血鬼と浅からず因縁があるようだけど。
 しかし、好色な…ってな〜。
 だけど、そういえば……と思い当たる。確か、3年前にも花嫁がどうこう言ってたっけ。
「………」
 まぁ、あの面構えじゃ、無理強いしないと嫁さん来ないっていうのも解る気がするけどな。








...... to be continue


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