例えば こんなふたり − 2 「ねぇ、」 「うん?」 イチイ・マクドールは、本の頁を一枚ずつ捲る麗しい恋人の手元を見ながら、ルックって指まで綺麗なんだ…とうっとりしながら、彼の呼びかけに夢うつつに答えた。 「してみない?」 今や彼・ルックの定位置と言っても差し支えない程に入り浸った図書館のその席。つい先日、想いを告げ所謂恋仲になったその人の一挙手一投足に見惚れていたイチイは、 「…はっ?」 と誠に呆けたリアクションを返した。 「何、何しようって?」 普段ルックから何かに誘われるという事がないので、かなり驚きはしたが、それ以上にその内容が気になった。 「―――セックス」 桜色の唇から発せられたあからさまな単語は、瞬時、呼吸さえ途絶えさせてしまう程にイチイを固まらせる威力を擁していた。 「…………………………はっ?」 こんな戦争の担い手として選ばれた時より、そして恋したのが男だという事実よりも、ルックのこの台詞にイチイは驚愕した。 それこそマジに、心臓が止まるかと思ったくらいには。 時折、触れたい衝動を抑えなければならない自分と違い、ルックにそういう欲があるなんて思ってもみなかったからだ。 ルックは不思議な程、その種の感情とは無縁に感じられていた。 「したくないんなら…」 「しっ、したい! ………です」 お願いします―――イチイは平身低頭の勢いそのままに頭を下げた。 …… to be continue
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