例えば こんなふたり − 5






「もう、いい」
「………えっ?」
「どんなのか解ったから、もうしない」
 疲れるし、痛いし…汗かくし、と微かに眉根を寄せながら言う。
 ちょっと拗ねたようなそんな様も、可愛いとは思うものの。
「そ、それって?」
「どんな事するのかと思ってたんだ。男女間のやり方なら本で解ってたけど、同性でもする事は可能だって聞いてのにどうするかまでは書いてなかったし……でも、あんなに痛いとは思わなかった」
「…………えっと…」
 確かに、痛い思いをさせた覚えがあるので、それには平謝りするしかないのだけれど。
「ご、ごめん…」
「謝らなくていいよ、僕が誘ったんだし」
「う、うん………だけど、」
「どうするのか解ったから、もうしなくてもいいや」
「それはっ!」
 それは困る!と、イチイは心底焦った。
 これが焦らないで居られようか。
 イチイは、生まれてこの方16年間、その中に置いて一世一代正に命懸けの説得を試みた。
「あ、あのね! セックスって48通りのやり方あるの、知ってる?!」
「…………あるの?」
 そんなに? と、思い切り疑わしそうな視線を向けてくるルックに、冷汗を零しながらイチイはこくこくと頷いた。
「あるの! シーナに本借りてきた」
「…………」
「ちゃんと、全部試してみないと! 知った事にはならないよ」
 恐らく、軍議の最中でもこんなに力一杯発言した事はない。その内容が、こうこうものでなかったのなら、誰も何の不安も抱かずに軍主に付き従うのであろうというものだけれど。
 その必死の説得が功を為したのか、ルックは不承不承頷いた。
「じゃあ、後47回…しないと」
「うん、そう!」
 47回……微妙な数だと、イチイは引き攣る。47回やり終えてしまう前に、ルックにセックスを好きになってもらえればいいのだけれど……。
 で、なければ、以降ルックには触れる事さえ出来なくなるだろうという、確信があった。
 初経験を済ませたばかり…の自分には、かなり難問だ。その初体験でさえ、恐らくセックスというよりはアクロバットに近いものだったろうと思う。
 だからと言って、他人となんて絶対にやりたくはない。
 欲しいのはルックだけで、触れたいのもルックだけなのだから。








…… to be continue


 って訳で、思い切り逃げた挙句、事後。必死な坊さまがある意味、愛しい(笑)。

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