例えば こんなふたり − 7 戦局も終盤にかかり(と、思いたい…)、砦内は実に雑多な人々で埋まってゆく日々。 解放軍といえば聞こえはいいが、所謂烏合の衆であるから、細部までは目が行き届かない事も少なくない。些細な事で喧嘩沙汰なんて、日に何度も報告があるくらいだ。 ふっと気付くと、マッシュに言われたんであろう、ビクトールとかフリックとか上層部の人間が城内をそれとなく見回ってる姿を目にする。 「あんたは、見回りしないの?」 石板前でうっとりとルックに見惚れていたら、本人からそう訊ねられた。 「うん、するって言ったらマッシュに止められた」 多分、グレミオやパーンを亡くし、父をこの手で殺めたからだろう。マッシュはせめて城内にいる間くらいは…と、身体と心を休めるように言ってくれている。 最初は受け入れ難かったけど、疲弊しきっていたのは確かだったようで精神よりも先に体の方が悲鳴を上げた。 自室で、一度倒れるという失態を犯した。 それを発見してくれたのはルックだったから、その失態は結局マッシュにしか報告されなかった。 グレミオとパーン、そして父の存在が無に返った時も―――ずっとルックが傍に居てくれたのだけは覚えている。 それと知らない内に、甘やかしてくれていた。 「それに、何か……気になるし」 「何が?」 ルックはキョトンとして聞き返してくるけど。 この石板を設置してある部屋には、他の所謂枯れた老人連中しか押し込んでないにも関わらず、 「最近人の出入り、激しくない?」 ってな事があるのだ。今現在は、僕が居る所為か関係者以外は見受けられないけど。 時間が空いた隙を見計らって不意を付いてここを訪れると、見知らぬ男共が何人か居たりするし、声を掛けたらそそくさと逃げ出すように去ってしまう。 血気盛んな連中が寄せ集まっている上、当り前ながらそういう施設がないのも相まって婦女子に乱暴を働くって手合いが居ない訳ではないし。 そんな状況に、気にならないって方が変だよね。 ルックは、男だとはいえこんっなに綺麗な訳だから! 「あぁ、みたいだけど」 だから…何?と、再び問われる。 あぁ、ルック! もっと危機感持とうよ!! 「ただね、心配なだけだよ。ルックの事が」 だから、ルックも気を付けてね?と念を押すと、思い切り理解不能って表情をしながらも。 「あんたの言う事、全然解んないけど……取り敢えず、気をつけてればいいんだね」 と、返してくれた。 うん、でないと軍師のお仕事放り出して、四六時中ルックの警護に当りそうな自分が……いるんだよね。 …… to be continue
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