例えば こんなふたり − 9






 動転してたとこに誰かの怒号が響いてきて、ビックリして押え付けられていた手が外れた瞬間にありったけの魔術を放出したのだと、ルックは小さな声で呟いた。
「あいつら……最近よくあの部屋に、来てた」
 あんたが気を付けろって言ってたのは……こういう事があるかも知れなかったから? そう問われて頷く。
「うん…ルックには解らないかも知れないけど。実際、思い通りにならない婦女子を暴力で押さえつける輩も……居る。こんな抑圧された明日をも知れない状況下だからっていうの要因のひとつだけど」
「そ、んなのっ!」
「そうだよね。ただの言い訳に過ぎないって、僕も思う」
 そして、そっとその綺麗な翡翠を覗き込む。
「ルックは……自覚ないみたいだけど、綺麗だから。至極、人の視線を惹きやすい。だから…ずっと心配してたんだ」
 ルックに限っていえば、厄介なのはその魔術だけだ。華奢な体躯には、それ相応の体力しか持ち得ない。要するに、術さえ発動させなければ、簡単に誰にでも組み伏せられる。
 そう考えて、ぞっとする。
「気持ち悪かった……」
「えっ?」
「他人に触れられて……吐き気がした」
 そう言って、おずおずと手を伸ばして腕にそっと触れてくる。そして、小さく唇を噛んだ。
「………あんたなら、大丈夫なのに。何で」








…… to be continue


 ごめん、会話ばっかり……楽しい。

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