例えば、こんな話 − 事と次第 2 重い鞄を手に、校門の前で暫し立ち尽くす。 目前に広がるのは、都蘭学園の高等部。あまりに厳しい校舎とその広大さに、我知らず溜息が零れる。 この都蘭学園は、小学部から大学院までの一貫した教育を売りにしているらしいけど………結構、というかかなり変わった校風の学校だと思う。 校則や学校行事の細々とした事までもを、生徒主体という名のもとに学生部会という学生の組織が決定権を持つのだという。一部のエリートで構成されるという学生部会に憧れる生徒は、少なくないらしいけど。よくよく考えたら、その実雑用係とさほど変わらないと思う。 あまり類を見ない校風だった所為か、はた又こちらの学園の卒業生に有名な人物が多い所為か、都蘭学園の噂は結構な数飛び交っていた。 そんなある意味特殊な学園に感じていたのは、胡散臭さだったのだけれど。 それなのに―――。 今日から、この学園が僕の学び舎に…なる、なんて事を一体どこの誰が予測出来ただろうか。 そろそろ登校生の目立ちだした校門前に、もうひとつ溜息を零して。 都蘭学園の生徒としての、重々しい第一歩を踏み出した。 「あなたたちを迎え入れる事が出来て光栄です」 そう言って時期はずれの編入生である僕等を出迎えたのは、総勢7名の学生部会の面々だった。学校全体をこれだけの人数で動かしているだけあって、流石に皆個性的な面構えをしている。 編入生は、僕をいれて30数人。 これだけの人数で1クラス作れそうだった。その内の半数は顔だけなら知っている。それもそのはずで、彼らとは先日まで同じ学校に通っていた。 合併といえば聞こえはいいが、実際は学校ごと吸収されたのだという。学力等の問題もあって、実際に編入を許されたのはこの人数だけだったらしい。 歩いて通える距離にあった、ってだけで選んだ学校にそれ程の思い入れがあった訳ではない。だけれど、一年半後だったら卒業していたのに……と考えると、今のこの状況は全くもって 面倒臭いとしか言い様がない。 自然零れそうになる溜息を押し殺し、ふっと顔を上げると。 皆の前で微笑む学生部会会長だという男と視線があった。確か、サクラ・マクドールだと名乗っていた。黒曜石の瞳と、黒い髪が凄く印象的な。 「―――歓迎します」 そう言って、微笑むさまに。 何故か、背筋が凍えた。 ...... to be continue
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