例えば、こんな話 − 事と次第 3 都蘭学園の授業は、僅かに以前通っていた学校より進んでいた。 「無理かも……しんねぇ」 そう言って、大袈裟に頭を抱え込む1年生ふたりに溜息を零す。 一時間目を潰して案内された学園内で目を留めた日当たりのいい中庭。綺麗に根の張った芝の上に腰を下ろして、 「だから、教えてやってるじゃないか」 面倒に思っているのを隠しもせずに言ってやる。 こっちだってごたごたしているにも関わらず、昼休みに新しい教室に押し掛けられて喚かれて。周りの視線が痛いのもあって、簡単でいいなら教えてやると仕方なく受けてやったけど。 「それでなくても、この時期の外部編入で目立つんだから、滅多な事しないでよ」 「どうせ、ルックは前の学校でも目立ってたじゃん」 口の聞き方を知らない一年生に、辞書の角を頭上に振り下ろすという報復をしてやる。 「痛って―――ッ!」 「口の聞き方に気を付けないと、初っ端から赤点とっても知らないよ」 「………ゴメンなさい」 渋々といった態で謝るのに、隣りの下級生は苦笑を噛み殺している。そして、 「でもさぁ」 と人の顔をしみじみと覗き込んできた。 「確かに僕等でさえあんなに注目浴びてた訳だから……ルックは推して測るべきだね」 そんなの。 「…………推して測られても嬉しくないよ」 ぼやいた途端。 ぞくりと、背筋を這い上がるような感覚が走り抜ける。 「――――――――ッ、」 勢いのままに振り返った先には、ブラインドの下りた部屋の窓。 あそこ、は………。 「ルック、どうかしたの?」 キョトンとして問い掛けてくるふたりには、ただゆるりと頭を振って見せた。 ...... to be continue
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