例えば、こんな話 − 事と次第 4 「ルックくん、放課後生徒部会室に行ってください」 艶やかな笑みでそう言うのは、担任だと紹介された綺麗な男。カミューといった、か。 「………なぜですか」 正直、あそこにはあまり近付きたくない。 「さぁ、詳細までは知りません」 柔らかな仕草に、前の学校と先生の質まで違っていると思う。前の学校は、熊並みの体格をした体育教師だとか、こだわりか何かは知らないけど中身も見た目も青い教師だとか……そんなあくの強そうな教師ばかりだった。 「………解りました」 不承不承ながらも頷くと、カミューは楽しそうに微笑んでいて。 「何か…」 「いえ、正直ですね」 どうやら、嫌だと思っていたのがそのまま顔に現れていたらしい。 「ですが、この学園に在籍する限り、学生部会は敵に回さない方が宜しいですよ」 「…………」 忠告そのものの言葉に、目を眇めて見上げる。だけれど、視線を向けた相手は、相変わらず艶やかな笑みを浮かべたままで。 そっと僅かに腰を屈めて、 「特に、部会長のマクドール殿は、ね」 ひそりと呟かれた。 担任のその台詞思い起こされるのは、微笑みながらも、冷ややかな瞳を向けてきていた男。 その底知れぬ黒曜石のような瞳を思い出した時に身を駆け抜けたそれは、恐怖ではなく…言い知れぬ嫌悪感だけだった。 嫌悪なんて感情を他人に対して感じた事なんて、ない。 だから……。 それが何を意味するか…なんて、知らない。 ...... to be continue
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