例えば、こんな話 − 事と次第 5 無駄に重厚な扉の前で、暫し躊躇う。 面倒は嫌いだけど、逃げたと思われるのはもっと嫌だった。 ひとつ深呼吸をして、握った拳を扉に打ち下ろそうとした、刹那。 ―――カチャ 思いも寄らぬ事に、内側から扉が開かれた。 「――――――ッ、」 「ようこそ、ルックくん?」 開かれた扉の向こう側には、生徒部会会長であるマクドールの姿。 それを気取られるのが癪で、僅かながら見上げる位置にある男の瞳を睨み上げる。 「……用があるって、聞いたけど」 大抵の輩なら、これで退く。現に今日も、しつこく声を掛けてきた奴等に同じ事をしてやったら以後声を掛けてこなくなったから。 フッチ曰く。 綺麗な顔で凄まれたら、背筋が凍る―――らしい。 尤もルックの場合、その顔に釣られて人が寄ってくるんだけど? との、実に有り難くない太鼓判まで着いて来たけど。 しかし、やはり都蘭学園の部会長ともなると、そんじょそこらの柔な男共と一線を画しているようで、見惚れる程に綺麗な微笑みを返された。 「こんなところで話も何だから、中へどうぞ」 脇へ移動しながら、室内へ誘う仕草を優雅な身のこなしで促され。 不本意ながらも、彼の理を得た言葉に否を言えよう筈もなく、渋々とそれに従った。 ...... to be continue
|