例えば、こんな話 − 事と次第 6 やたらと広い室内に足を踏み込むと、職員室でさえ使用されていないような立派な机に迎えられる。それが、入口の真正面。その隣りに、向かい合わせた形に置かれた机が6つ。 大きさ的に生徒部会専用の会議用にだろうと思われる長細い机が、部屋の半分から向こう側に据えられていた。 編入挨拶時に入室した時は、編入人数も多数で役員も数名居たから気付かなかったけど、教室一個分くらいの広さはありそうだった。 「……誰も、居ないけど」 「あぁ、今日はね」 そうそう毎日居残ってる訳じゃないよ、と言われ 「そう」 とだけ返した。 生徒会とか、級長とか、やった事ないからその辺りは全然知らない。中学時やら前の学校でも何度か声を掛けられたけど、面倒で全部断っていた。 「尤も、忙しい時は凄いけどね。あぁ、ルックくん、こっち」 「……ルックで、いい」 この男にくん付けで呼ばれるとなんだか胡散臭い気がする…と、失礼かも知れない事を思いながら指し示された方を見ると、もうひとつ扉があった。 「部会長室、こっちだから」 にっこりと笑みを向けられ、暫し躊躇したけど。 「どうぞ?」 扉を開かれ促されれば、結局従うしかない。 「…………」 足を踏み入れた途端、レックナートさまが先達てまで夢中になっていた、会社の重役同士いざこざを面白おかしく見せるドラマを思い出した。レックナートさまは、かなり独特な志向の持ち主で、未だにあの方のハマる目安が何なのか解らない。 いや、そんな事は兎も角。 社長室…っていうんだっけか、こういうの? 部会長室だという部屋には紅色の絨毯が一面に敷かれ。黒張りのソファーが向かい合って置かれた奥に、ブラインドの掛かった窓際を背にして配された大きな机。毛足の長い絨毯にしろ、革張りのソファーにしろ、重厚な机にしろ………学園長室より立派って…どういう事だろう。 ...... to be continue
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