例えば、こんな話 − 事と次第 7 促されるままに、ソファーに腰を下ろす。 遠慮なく向けられる視線と降りる静寂とに、居心地の悪さを拭えない。 「お茶でもどう?」 「要らない。……そんな事より、用件を済ませてくれる」 一刻も早くこの部屋から……嫌味なくらいに感情を窺えない笑顔を浮かべるこいつの視線から、逃れたい。 優雅な身のこなしで向かい側のソファーに腰を下ろしながらも、その黒曜石のように深い色合いの瞳は逸らされない。 「この学園は気に入ってもらえた?」 「………さぁね」 まだ、編入一日目だ。そんなの解る筈もない。 始終向けられる視線は、なにもこの学園に限った事ではないし。 気にせずには居られないけど、それでも無視できる範囲内のものだ。 ふっと逸らした視線の先。僅かに日が差し込むように調節されたブラインドの隙間から、中庭が窺える。 昼休みに五月蝿い下級生に請われて訪れた、その場所。 「……前の学校が、懐かしい?」 下ろされていた、ブラインド。 「………別、に」 だけれど―――あの時に感じた悪寒とも思える感覚は、似てはいなかった? 「そう、それは良かった」 こいつのこの視線に晒されている今の、それと。 ...... to be continue
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