例えば、こんな話 − 事と次第 8 ひたりと向けられる黒曜石の瞳が、僅かな身動きすら抑止する。 「転入初日からこういう申し出もどうかとも思ったんだけど…」 そう言って、にこりと微笑む。それは笑みの筈なのに、背筋が強張るのは何故なんだろう。 「………何」 「ルックに、学生部会に入って欲しいのだけれど」 「………えっ」 あまりに突然な、それも思いも寄らなかった申し出に唖然となる。 「何を…」 「編入してきた人数として30数人というのは、少なくない。そちらの学校の今までの意向やらを考慮に入れながら、君たちが過ごしやすい環境を少しでも実現できれば…と思って、ね。それに、君は優秀な人材だし」 「僕は……」 そんなの、どうだっていい。 巻き込まないで、欲しい。 「そんなの、知らないよ」 それに、何を持って優秀だと言うのか―――訳の解らないこの男の言い分に、僅かな混乱を感じながら問う、と。 「優秀だよ、君は」 手にしていた書類をぱらりと捲って見せた。 「編入試験の成績は全く文句の付けようがない、よね」 次の学内の定期試験が楽しみなくらいに? 言われて、こいつの手の中にあるのが、先日の編入試験の成績を記入した用紙だと気付く。 「そんなの、勝手にッ」 例え生徒部会長だろうと一生徒が、本人の許可もなく見ていい類のものではない筈だ。 「勝手?」 くすりと嘲笑った男は、それまで手にしていた書類を机の上に投げ捨てた。 「だけど、この学園内の全ては、僕の方へ報告がなされるようになってるんだ」 「………ッ! な、」 にわかには信じ難い内容を告げられ。 そして、それを当然のように受け止めているかのような言い様共々、信じられない思いで目の前の男を凝視した。 ...... to be continue
|