例えば、こんな話 − 事と次第 9 カリカリと時折止まってはしばらく後再び耳に届くペンの音に半分注意を向けながら、視線は窓の外を彷徨っていた。 因みに、場所は図書館だ。折角の本の山に囲まれながらも手を出せないのは、下級生のふたりに強請られて仕方なく、緊急家庭教師と化しているからだ。 片手間に読むんじゃ、家庭教師の方は兎も角、本の内容は頭に入ってこないだろう。それは、勿体無い。 そして、それ以上に気に掛かっているのは、昨日の生徒部会室でのあの男の話。 語られる話に唖然となった僕に、あの男は相変わらずの笑顔を向けた。 ――― 「考えといて欲しいな」 という言葉と共に。考えるまでもなく、答えは否だというのに。 なのに、その時の僕にはそう言えなかった。 話の内容的に、アレはかなりの重要事項だと思う。あそこまで内情を暴露するという事は、確実に生徒部会に引っ張り込める算段があるのか。 尤も、そんな算段なんて知った事じゃないけど。 「………面倒、だね」 思ったまま、溜息が零れる。 と、右斜め前方から聞こえていたペンを走らせる音が途絶えた。 人が貴重な時間を裂いてまで家庭教師紛いの事をやってるというのに、サボってるのか?とそちらの方へ視線を向ければ。 じとりと睨み上げてくる瞳に出会った。 「何、サボってんのさ」 「教えてもらってて言える義理じゃねーけど。溜息、5回目」 「……そりゃ、悪かったね」 露程さえ思ってやしないけど、このサスケっていう下級生は直情的な分怒らせると面倒なのは、過去に何度も体験して知っているので、そうおざなりに返した。今の精神状況だと、いつものようにさらりと流せない確立が、情けないながらも高い。 どこか憮然とした顔付きながらも、一応それで良しとしたのか、サスケはそのまま椅子の背もたれに踏ん反り返る。 「何か、お前もフッチも変」 言われて、ふっと気付く。そう言えば―――。 「……フッチ?」 ノートの見開きページいっぱいにグルグルと円を描きながら、フッチは心あらずの様をあからさまなまでに晒していた。 ...... to be continue
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