例えば、こんな話 − 事と次第 11 その日の放課後。 生徒部会室の扉の前で、先日と同じ様に立ち尽くす。 重厚な扉ゆえか、室内の様子が全く窺えない。 誰か在室しているのかどうかさえ解らない。 正直にいうなら。 本当は、こんな部屋には近付きたくないし、係わり合いにさえなりたくない。それでも、先日の申し出の返事をしない事には、その僅かな係わり合いさえ切れなさそうな気がしていた。 「あっと…ルック?」 いざ、扉を叩こうと上げた拳が、横から掛けられた呼び掛けに動きを止める。咄嗟に視線を向けた先には。先日、生徒部会の面々と顔合わせをした時に見た顔のひとつ。 確か…。 「………テッド?」 って名だったと思う。 と、そのテッドは 「うわっ」 と、半歩後ずさった。 「……何」 そのリアクションは。 「いや、何か…感動だな〜って。一度顔合わせただけなのに、名前覚えててくれるなんて」 「………名前覚えるの、得意なだけだよ」 そう、実際他人なんてどうでもいいのに。何故かそれだけは得意だったり、する。 「いや、でも感動する!」 うんうんと頷いて、そしてふっと気付いたように問うて来る。 「あっ、ここに用事か?」 「……そう、生徒部会長にね」 一瞬、何ともいえない表情を浮かべたテッドは、僕の訝しげな視線に気付いたのか。 「じゃあ、ご案内v」 瞬時おどけたような笑みになると、目の前の重厚な扉を開いた。 ...... to be continue
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