例えば、こんな話 − 事と次第 13 「あぁ、それね。推察の通り僕の意向だよ」 「………なっ」 まさか、はっきりと肯定されるなどと思っていなかった所為で言葉に詰まる。 「実際はね」 と、大仰な椅子に深く腰掛け、膝の上に両手を軽く組んで、そしてその視線だけはしっかと自分に向けられている。 「別にあんな小さな学校、どうでも良かったんだけど? どうしても、欲しいものがあったんだ」 あんな古いだけが取柄みたいな学校にね、と言い切るその様に。 怒りで目の前が赤く凝る。 「―――あんた、」 この男がつまらなそうにそう言うのは、まがりなりにも一年半在籍した学校だ。大した思い入れもないと思っていたけど……こんな風に個人の欲の為にどうこうされて、黙っていられる筈もない。 「最低だッ!」 裏庭の、大きな樹の陰で食事を取るのが日課だった。 「あんたのどこにそんな権利があるっていうのさ」 古い学校らしく、古書・蔵書の多さを誇る図書館が……気に入っていた。 「自分の欲を満たす為なら、何したっていいって、」 赤いペンキで直に立入禁止と書かれた屋上への扉の鍵が壊れていた事なんて、在校生の殆どが知っていた。 「―――思ってる」 きっぱりと断言されて、刹那言葉を失う。 「そうでもしないと手に入らないものなら、もしくはそうすれば手に入るっていうんだったら。そうする事を厭わないよ、僕は」 笑顔さえ浮かべて。 何故、平然とそう告げられるのか。 混乱する中で、その疑問が脳裏を駆け巡る。 こんな己の評判を落とすような事、ましてや学生部会の部会長を務める程の男なのだから、他人には知られたくない筈だ。 なのに………何故? この男の全てが、理解できない。 ...... to be continue
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