例えば、こんな話 − 事と次第 14 窓を叩き始めた雨粒に、朝見た天気予報が当ったらしい事を知る。 視界に入る窓の外に、それだけ思う。 「好きに…したらいいさ。だけど、僕はあんたを絶対に認めない」 きっぱりとそう言い切ると、一時も逸らされる事のなかった黒曜石が僅かに揺らいだ気がした。 だけれど、再びその口が開いた時には、そんな様は微塵もなく。 「それも結構。―――居てくれさえすれば、いいよ」 「…………」 理解、できない。 「………明日から、でいいよね」 今は、一時も早くこの部屋から出たい。この男と同じ空間から、開放されたい。 「そうだね。明日からよろしく」 拒絶されながらもそう言って笑う男に、混乱と躊躇を生み出させられたまま、生徒部会長室を後にした。 未だ教室に置いたままの鞄を取りに、既に人気のなくなった2階への階段を前に歩が止まる。ようやっと、強張った肩から力が抜けた気がして、ひとつ溜息が零れる。 気の所為でも何でもなく、とんでもなく疲れきっていた。 信じられない事やら、疑問ばかりが渦巻いてて。情けないながらも、頭が飽和しそうな気さえする。 そもそも―――。 あいつからの言葉を脅しととったけど。確かにあれは、それ以外の何モノでもなかったのだけれど。何故そうまでして、僕を引き入れたいと思うのかが、未だに謎だ。 それに、あいつが学園を買収してまで何を手に入れたのか…も、解っていない。 「…………」 尤も、そんな事が解ったとしても。今の僕に、あの男が作った流れに抗う術なんて残されてやしないけど。 そう自嘲気味に笑みを浮かべた所で、 「うぉーい、ルックー」 渡り廊下の向こう側から暢気な声で名が呼ばれた。 ...... to be continue
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